日本メーカーはもう手遅れ?中国BYD、2027年に全固体バッテリーの実証利用開始へ

2025.02.19

  • 中国BYDのバッテリー事業CTOは、全固体バッテリーの大量採用は2030年以降になる可能性があると述べています。
  • 一定規模の利用が行われた後、全固体三元系バッテリーのコストは理論的には液体三元系バッテリーと同等のレベルに達するだろうとも同氏は述べています。

BYDの全固体バッテリー戦略と2027年の実証利用計画

中国で圧倒的な強さを見せる自動車メーカーBYD(HKG: 1211、OTCMKTS: BYDDY)は、2027年頃に全固体バッテリーの「実証利用」を開始できるはずだと、同社のバッテリー事業CTOであるサン・フアジュン氏は本日、フォーラムで述べました。

一方で全固体バッテリーの真の大規模採用は、2030年以降になる可能性があるとも、サン氏は全固体バッテリーに関するフォーラムで述べました。

全固体バッテリーの技術ルートとコスト削減の課題

業界全体を見ると、全固体バッテリーの開発に関してさまざまな企業がほぼ同様の進歩を遂げていると、サン氏は付け加えました。

BYDは世界最大の新エネルギー車(NEV)メーカーであり、パワーバッテリーメーカーとしては中国CATLに次ぐ世界第2位です。2024年におけるBYDのパワーバッテリー搭載容量は153.7GWh、世界シェアは17.2%であり、CATL(SHE: 300750)の37.9%に次ぐ第2位でした。

2024年4月、CATLのチーフ・サイエンティストである呉凱氏は、バッテリー業界のイベントで、同社は2027年に全固体バッテリーの少量生産を目指しているが、大量生産にはコスト面を含め、まだ問題がある、と語りました。

液体リチウムイオンバッテリーはエネルギー密度が350Wh/kgに達する可能性があるが、それ以上の改善は難しい一方で、全固体バッテリーはエネルギー密度が500Wh/kgに達する見込みであると、呉氏は当時語りました。

昨年11月、地元メディアのレイトポストは、全固体バッテリーで硫化物ルートに焦点を当てていたCATLが、20Ahサンプルの試作段階に入ったとも報じていました。

硫化物電解質の採用

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Credit:BYD

今日の講演でサン氏は、BYDの固体バッテリー用材料の選択も、主にコストとプロセス安定性の検証から、硫化物電解質に基づいていると述べました。

全固体バッテリーの他の2つの主な技術ルートは、酸化物ルートとポリマールートです。昨年4月、酸化物ルートを選択した中国の固体バッテリー新興企業であるタレント・ニュー・エナジーは、エネルギー密度720Wh/kgの固体バッテリーセルの製造に成功したと発表しました。

BYDは2013年に全固体バッテリーの研究開発を開始し、主に技術ルートと素材を探っていたとサン氏は語りました。2016年までに、BYDは全固体バッテリーの技術的実現可能性の検証を開始し、その時点でのプロトタイプは主にソフトパックバッテリーで、容量は1Ah未満と非常に小さかったとサン氏は講演で述べました。

サン氏によると、2023年までにBYDは全固体バッテリーの産業化の実現可能性を検証し、セルシステム、材料、およびさまざまな技術の設計を開始しました。またサン氏によると、2024年までにBYDはすでに、単セル容量20Ahおよび60Ahの固体バッテリーセルの試作品が生産ラインから出てくるのを目にしているとのことです。

サン氏は、全固体バッテリーは長期的にはコストの問題にならないだろうと考えています。

全固体バッテリーにおける硫化物ルートでは、コストに最も大きな影響を与えるのは、主にニッケルとコバルトの3元材料であるとサン氏は述べています。そして、硫化物電解質のコストが現在非常に高い理由は、主に生産量が少ないためだとサン氏は指摘しています。

「生産量が少ない状況でコストについて語ることは、あまり理にかなっていません。」

サン氏によると、一定規模の使用量に達すれば、全固体三元系バッテリーのコストは理論的には液体三元系バッテリーと同等のレベルに達すると考えられるとの事です。

ソース:日本メーカーはもう手遅れ?中国BYD、2027年に全固体バッテリーの実証利用開始へ