テスラの蓄電池「パワーウォール」「メガパック」のコストはお得?
2020年10月26日
自宅用蓄電システム設置を考える際に、気になるのはコストです。本体価格は他メーカーに比べて安いテスラのパワーウォールですが、寿命まで使った際のkWh当たりのコストはお得なのでしょうか。CleanTechnicaの検証記事を全文翻訳でお届けします。
EVバッテリーのkWhあたりのコスト
私達(CleanTechnica)はバナジウムフロー電池vsリチウムイオン電池で、長期間の蓄電で生じるコストの違いに関する記事を、テスラCEOのイーロン・マスク氏に「リチウムイオン電池のコストの数値が現時点で5倍、将来的には10倍となっており、大幅に間違っている」と指摘されて取り下げたところです。
しかし、そのおかげで私にはさらなる疑問が湧いてきました。このトピックをより掘り下げ、バッテリー価格と長期コストの文脈で共有できる新しい情報も入手しました。
イーロン氏からこれまで公にされていなかった情報を含むテスラの蓄電価格に関する詳細を得たのに加え、StorEn Technologies(バナジウムフロー電池を製造する会社)の予測についても聞きました。
まず初めに、大きな誤解を解くためにもいくつか指摘をしておきたいと思います。一番大きなものは『電気自動車バッテリーのkWhあたりのコスト($/kWh)は、据え置き型の蓄電システムのコストと全く同じではない』というものです。
さらに、$/kWhには2種類あります。1つ目は1度に貯蔵できるエネルギー量と初期費用にかかるコストをベースにしたもの(例えば100kWhの容量で初期費用が5,000ドル(52万5000円 ※1ドル=約105円)だとすると、その数値は$50/kWh(5250円/kWh)になります)。
2つ目は貯蔵システムの寿命が来るまでにかかる実際のkWhあたりのコストです。後者を求めるには、システムのサイクル数と寿命を計算する必要があります(実際には、効率性、メンテナンス、修理など他にも考慮する点があります)。私はテスラのパワーウォールが登場した2015年に、パワーウォール vs 主な他メーカーの蓄電システムで計算しました。どのような計算をするのかよく知りたい方はこの記事を読んでみてください。
冒頭で触れた記事の価格予想に関してのイーロンの返事は次のようなものでした。「リチウムイオン電池は普通$600~900/kWhかかり、3,000~4,000サイクルもちます。よって、サイクル当たりの平均コストは$0.21(約22円)になります。」
電気自動車市場、特にEVバッテリー価格に造詣が深い人は、この数値($600~$900/kWh)を見て目を剥いたことでしょう。しかしこれはEV向けのリチウムイオンバッテリーではなく、蓄電システム価格で、かなり違うものです。さらに、これは”コミコミ”の値段(蓄電システム全体の値段で、バッテリーセルやパックのみの価格ではない)と個人的に自信を持って言えます。
これらを踏まえた上で、さらに詳しく見ていきましょう。
テスラ パワーパックとメガパックの価格
メガパック
ある読者が、パワーパックの価格は現在$539/kWhだとコメントしていました。直近の値下げの後の話ですが、それでも$600/kWh近くします。5倍とまではいきませんが、イーロンの平均$0.21/サイクルの根拠となる$750/kWhよりはかなり低い数値です。そうです、この$539/kWh はインバーターのコストを含んでいるのですが、StorEnは特にバナジウムフロー電池がシステム全体のコストに焦点を当てた方が有利であるため、そのような計算をしたと私は思っています。またこれはさらに大きな利益にも繋がるのですがそれについては後で触れることとしましょう。
テスラ・パワーパックについての私の質問に対し、イーロン・マスク氏は新しく面白い情報をいくつか提供してくれました。
「パワーパックは古い商品です。電力会社や工業規模の顧客に現在送っているのはメガパックになります。」
「バッテリーパックそのもののコストは$200/kWhになります。パワーエレクトロニクスと、使用期間の15~20年を考慮に入れるとコストは大まかに言って$300/kWhになります。ただ、バナジウムフロー電池vsリチウム電池、パワーエレクトロニクス、15~20年利用では正確な比較はできないでしょう。」
ここでもう一度書いておきますが、StorEnがオールイン、システム全体のコストとして言及しているものを私は読んだのです。そこを明確にしたく先方にコンタクトを取ったので、返事が来たらこの記事をアップデートしたいと思います。
さらに、寿命が来るまでの全体のコストを考えなければなりません。上で書いたように、イーロンは15~20年の使用期間を想定しています。StorEnは25年の寿命で500kWhのシステム、最高で15,000サイクルに言及しています。長期にわたるkWhごとのコストとしては、どうなるのでしょうか?
ST 50-500システムの価格が分からないため、その答えは出ません。 しかし別の記事で、SrorEnはバナジウムフロー電池のコストは1サイクルで$0.04/kWhで、最大15,000サイクルになると記していました。ということは、コストは$600/kWhになります。(面白いことに、これはStorEnのリチウムイオン電池の見積もりの最低コストとなっています。)
StorEn presents TitanStack™ for Grid-Scale Applications(YouTube)
もしStorEnから価格の詳細を得られれば、この記事に追記をするか、新しい記事を書くことにします。またメガパックのkWhあたりの価格も計算してみるかもしれません。
パワーウォールのスペックと価格
StorEnは住宅向け・小型のものと、電気事業者規模、両方の蓄電商品を手掛けています。そこで、わがチームのライターが(2つ)持っている自宅用蓄電池であるテスラのパワーウォールについて考えてみましょう。
ライターのKyle Fieldは、13.5kWhのパワーウォール1台に6,500ドル払いました。テスラ・ゲートウェイや設置コストは含まれていません。よってコストは$481.48/kWhになります。ただし最近価格が上がり、今はゲートウェイや設置コスト(テスラソーラールーフトップシステムを含めて3,500ドル、もしくは4,500ドル)なしで7,000ドルとなります。この価格だと、コストは$518.52/kWh となります。これでも、最低予想コストの$600kWhよりも低いですね。しかし(イーロンが言った価格の)5分の1ではありません。ゲートウェイのコストをここで入れるべきか、私には判断が付きません。特にこれらの商品と数値を、何と比較すれば良いのか明確ではないので。
StorEnにはバナジウムフロー電池の価格を教えてくれるよう頼みましたが、まだ分かりません。
他にも考慮すべきスペックや約束事があります。SroEnのバッテリーは25年ものとされているのに対し、パワーウォールの保証期間は10年です。
StorEnは最大15,000サイクルと言い、テスラ・パワーウォール1のサイクルは最大5,000でした。パワーウォール2は太陽光での自家発電・消費用に関しては無制限サイクル、他のアプリケーション用には37.8MWhまでとなっています。37.8MWhが充電と放電両方での数値として計算すると、前者が10年で最高3,100サイクル、後者で3,200サイクルです。
最後に考慮すべきスペックとして、パワーウォールの放充電効率は90%、StorEnのシステムの放充電効率は75-80%となります。
商品寿命が来るまでのkWh当たりの正確なコストはあと少しで分かりそうです。もう少し詳細が分かった際には、このセクションをアップデートするか、新しい記事を書くつもりです。
結論
これらの蓄電システムをもう少し丁寧に比較をするには必要な情報がいくつか抜けているのですが、核になる部分の結論は以下の通りです。
●イーロン・マスク氏から私が受け取った今日のコメントによると、パワーエレクトロニクスとサービス込みでメガパックのコストは現時点で$200/kWh以下、もしくは$300/kWh以下で、パワーパックの最新コストと考えられている$539/kWhよりも相当低くなります。
●パワーウォールのコストは今年前半の$481.48/kWhから$518.52/kWhになりましたが、ここにはテスラ・ゲートウェイや設置費用は含まれていません。
ここまでの情報では、システムの寿命が来るまでに貯蔵されるトータルの電気量にかかるコストが分かりません。これを求めるにはいくつかの要素を加える必要がありますが、10~20年をかけて推測しなければならない難しいものもあります。効率性、放電がどこまでされるか、サイクル数、メンテナンスと修理コストなどです。
取り下げた記事よりもある程度明確になっていると良いのですが……このトピックに関して十分な情報が集まったら、また記事を書こうと思います。
ソース:https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/tesla-powerwall-megapack-costs/