生物の「体脂肪をモデルにした電池」が開発中。従来の電池の72倍もエネルギーを貯める
technology 2020/08/20
間はエネルギーを効率的に蓄えることができます。これらのエネルギーは燃費もいいため、多くの人が肥満に悩まされるほどです。
米国ミシガン大学化学工学科のニコラス・コトフ氏ら研究チームは、生物の脂肪蓄積を模倣した新しい充電式亜鉛電池を開発しました。
新しい電池は脂肪のようにロボットを包み込み、従来のリチウムイオン電池の72倍のエネルギーを供給できるでしょう。
年、ロボットの需要が急激に増加しています。配達用ドローン、ナースロボット、倉庫作業ロボットなどその種類も様々です。
しかし、これらのロボットに自立性を持たせるため、ロボット内部にバッテリーを積まなければいけません。貴重な内部スペースを20%以上も占領する場合が多く、バッテリー問題はロボットの課題となってきました。
特に、マイクロサイズのロボットを運用するためには、バッテリーの縮小・効率化が必須になるでしょう。
指の関節みたいに折り曲がる「折り紙マイクロボット」が開発される – ナゾロジー
コトフ氏は、「今日、エネルギー密度の点で最先端を走ってきたリチウムイオン電池に匹敵する構造は他にありませんでした」と述べています。
そこで彼らはリチウムイオン電池を越える新しい構造電池を開発することにしました。生物の脂肪蓄積を模倣した新しい構造を生み出したのです。
脂肪蓄積を模倣した「分散型」亜鉛電池は72倍のエネルギーを蓄える
新しい電池は亜鉛電極が利用されており、電解質膜を介してエネルギーを蓄積および転送することで機能します。この電解質膜はアラミドナノファイバーと水ベースのポリマーゲルで成り立っているとのこと。
これらの素材は安価かつ豊富であり、現在使用されている電池よりも環境に優しいものです。
さらにリチウムイオン電池が可燃性であるのに対し、新しい亜鉛電池は損傷しても発火しません。
そして新しい電池は「分散型エネルギー貯蔵」が可能です。
人間を含む生物は単一の脂肪袋ではなく、複数の脂肪袋をまんべんなく持っています。そのため、体全体に脂肪を蓄えることができます。
仮に身体の一部だけに脂肪全てが蓄えられるとしたらどうなるでしょうか?他は一切脂肪がなく、二の腕だけに十キロ以上の脂肪がぶら下がることになります。この場所がお腹でも太ももでも、活動に支障を与えるでしょう。
実はこれまでのロボットは、このように「ほとんどの生物とは異なった構造」をしていました。一部だけに脂肪(電池)を集中して積んでいたのです。そのためまとまったスペースが必要でしたし、エネルギー効率も悪くなっていました。
さて、今回開発された新しい電池はロボットに対して脂肪のように分散して装着できます。これにより、リチウムイオン電池1つを搭載した場合の72倍もの電気容量が得られました。
小型ロボットでの実験が成功
研究チームは新しい電池をテストするために、小型のミミズロボットとサソリロボットを用意しました。
それぞれのロボットが搭載していた元のリチウムイオン電池を外し、新しい「脂肪電池」を巻きつけます。
表面を薄っすらと覆っただけですから、ロボットの動きに影響を与えていないこと分かりますね。
これをヒト型のロボットに適用できれば、重いバッテリーが動きを妨げないため、より「人に近い動き」が可能になるでしょう。またマイクロボットのバッテリー問題を解決する可能性も高いはずです。
現在研究チームは新しい電池の特許を申請しており、市場へ投入するための商業パートナーを探しています。