米ベンチャーもナトリウムイオン電池を商業生産開始、最大年産600MWh
2024.05.09
米Natron Energy(ナトロン・エナジー)は2024年4月末、ナトリウム(Na)イオン2次電池(NIB)の商業生産を始めると発表した。同日、米国ミシガン州ホランド(Holland)の生産工場で開催した稼働セレモニーには、同社の開発を支援してきた米エネルギー省(DOE)傘下の研究機関である米Advanced Research Projects Agency-Energy(ARPA-E)所長らも出席したという(図1)。量産規模は最大600MWh/年で、初出荷は同年6月になる。
NIBは、リチウム(Li)イオン2次電池(LIB)のLiの代わりに、Naイオンを電池内キャリアとして用いる2次電池である。Liは発掘可能な場所が限られ、供給不安が付きまとう。対して、Naは海水からほぼ無尽蔵に得られるため、電池の製造コストを大きく下げられる可能性がある。既に、複数の中国企業がNIBの量産を始めているが、中国以外での商業生産はナトロン・エナジーが初めてとなる注1)。
ナトロン・エナジーが量産するNIBは、正負極の活物質に共に青色顔料のプルシアンブルー類似体(PBA)を用いるという特徴がある(図2)。PBAは鉄(Fe)やマンガン(Mn)をベースとする。Liのほか、高価なコバルト(Co)やニッケル(Ni)を使わないため、材料コストが安い。加えて、充放電時間が5~15分と短い。これは、出力密度が高いということでもある。しかも充放電サイクル寿命は5万~10万サイクルとする。仮に充放電が1日1回であれば、充放電サイクルが10万回は、約274年使えるわけだ。LIBの場合、寿命が長いとされるリン酸鉄リチウム(LFP)タイプでも1万~2万回である。