TerraPowerのNatrium、蓄熱でAIデータセンター向け電力供給へ

2026.08.21

TerraPowerのNatrium、蓄熱でAIデータセンター向け電力供給へ

ビル・ゲイツ氏が創業した原子力スタートアップTerraPowerが、原子炉「Natrium(ナトリウム)」を武器に、同社初となる具体的なデータセンター向け発電所案件を発表しようとしています。

Bloombergは8月18日、同社が2026年内に初のデータセンター向け案件を発表する計画だと報じました。

強みになるのは、出力345MW(メガワット)のNatriumに組み込まれた溶融塩の蓄熱システムです。


2027年着工の2号案件、メタとは最大8基で合意済み

Bloombergによると、クリス・レベック(Chris Levesque)CEOはデータセンター向け発電所が2027年に着工する見通しを示しています。実現すれば同社2番目の発電所で、顧客名はまだ明らかにされていません。1号機は米ワイオミング州で建設中です。

TerraPowerは2026年1月、メタがNatriumプラント最大8基の導入を支援することで合意したと発表しています。合意はまず2基(合計最大690MW、早ければ2032年の納入目標)の開発を支援し、追加で最大6基分(約2.1GW=ギガワット、2035年目標)の電力を受け取る権利を持つ構成です。

8基が揃えば最大2.8GWのベースロード電力(常時一定の供給力)となり、蓄熱システムの活用時には最大4GWまで供給力を高められるとしています。


原子炉を止めずに蓄熱で追従するNatriumの設計

Natriumは、ナトリウムを冷却材に使う原子炉と、溶融塩の蓄熱システムを組み合わせた設計です。米エネルギー省(DOE)の環境評価資料によると、原子炉の熱出力を一定に保ったまま、送電網に供給する電力を最大500MWまで変化させられます。

電力需要が低い時間帯には、原子炉の熱を溶融塩の蓄熱システムに移して蓄えます。需要が高まると、蓄えた熱で追加の蒸気を作り、TerraPowerによると345MWの基本出力を5時間半超にわたり最大500MWまで高められます。原子炉そのものの出力を上げ下げする必要はありません。

TerraPowerによると、この蓄熱システムは元々、風力や太陽光など変動する再生可能エネルギーと円滑に組み合わせて使うために設計されたものです。


秒単位で変動するデータセンター負荷と、高稼働率の原子力

この設計が生きる背景には、AI用途を含むデータセンターの変動する電力需要があります。米国立研究所のNational Laboratory of the Rockies(NLR)が2026年2月に公表した研究によると、データセンターの電力需要は秒単位で大きく変動することがあります。この急な変動は敷地内の発電用タービンにねじり応力を与え、保守費の増加や設備の早期引退につながると指摘されています。

同研究は、応答の速い蓄電池や燃料電池を組み合わせて急な変動を吸収し、タービンは一定出力の運転に徹する構成が有効であることを示しています。

一方、原子力は高い設備利用率でベースロード運転するのが一般的です。EIA(米エネルギー情報局)によると、2024年の米国の原子力発電の設備利用率は90.8%で、主要電源の中でも非常に高い水準です。NLRの2024年の分析では、エネルギーモデリングに用いる出力調整速度の参考値として、大型炉を定格の5%/分、小型モジュール炉(SMR)を10%/分と設定しています。

Natriumの蓄熱システムは、この「急な変動は別の仕組みで吸収し、原子炉は一定運転を続ける」という役割分担を発電所の中に備えた構成です。AIデータセンターの電力確保を巡っては、NvidiaがSB Energyに15億ドルを出資する など大型投資が相次いでいます。

ソース:TerraPower「Natrium」、蓄熱でAIデータセンター向け電力供給へ