日産、新型「リーフ」(第3世代)説明会 「常識を覆す、新時代のクロスオーバーEV」はどう進化した?
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日産自動車は6月17日、第3世代となる新型EV(電気自動車)「リーフ」を発表した。この発表に際し、チーフ・プロダクト・スペシャリストの遠藤慶至氏、プログラム・デザイン・ダイレクターの田勢信崇氏、チーフ・ビークル・エンジニアの磯部博樹氏が新型リーフのプレゼンテーションを行なった。
ロスオーバースタイルとなった新型リーフでは、モーター、インバーター、減速機を一体化した新開発の3-in-1 EVパワートレーンを採用。バッテリは52kWhと75kWhの2種類を用意し、52kWh仕様の最高出力は130kW(174HP)、最大トルクは345Nm。75kWh仕様は最高出力160kW(214HP)、最大トルク355Nmを発生する。 また、前のクルマが減速した際にドライバーがアクセルペダルを戻すと、システムがなめらかにブレーキを制御して速度を落とし、ドライバーの減速操作をサポートする「インテリジェントディスタンスコントロール」、車両周囲を車外のさまざまな仮想視点から確認できる「インテリジェントアラウンドビューモニター」、インテリジェントクルーズコントロールとステアリングアシストを組み合わせた「ProPILOTアシスト」、さらにプロパイロット2.0といったさまざまな運転支援技術を採用するなど、現在EVを所有するユーザーはもとより、今後、内燃機関車から代替する選択肢になることを目指して開発が行なわれた。 ■ 常識を覆す、新時代のクロスオーバーEV 初めに登壇したチーフ・プロダクト・スペシャリストの遠藤氏は、歴代リーフが70万台以上の販売台数であること、19億kgのCO2排出量を削減してきたこと、世界で100以上の賞を受賞したこと、280億kmを超える総走行距離であることを報告し、この知識と経験をもとに3代目リーフの開発にあたったと説明。3代目リーフで目指したのは「常識を覆す、新時代のクロスオーバーEV」とし、「充電に心配があるとか航続距離は大丈夫か。そういったところが非常にネックでしたので、EVの販売台数をなかなか伸ばすことができませんでした。これをいかに覆すかというところに今回チャレンジしています」とコメント。 コンセプトキーワードは「PROVOCATIVE RESPONSE-ABILITY(新しい価値、時代に応える力へ挑戦するクルマ)」で、具体的には「スリークで大胆なスタイルながら考え抜かれた室内空間」「レスポンスに優れたスムーズな走行性能とベストレベルの航続距離」「EVがより快適になり、ライフスタイルを豊かにする先進技術を搭載」の3点がアピールポイントになるという。 まずスタイリングについて。ボディサイズは4360×1810×1550mm(全長×全幅×全高/日本仕様)、ホイールベースは2690mmで、先進的でダイナミックなプロポーションへと進化。現行とほぼ同じ全高を実現した点について、遠藤氏は「全高がそんなに高くなく、一見狭そうに見えるかもしれませんが、今回われわれのターゲット層は30代~40代のファミリー層で、小さい子供を含めて3人がしっかり乗れるパッケージングを両立させるということで広々として非常に使いやすい。チャイルドシートをしっかり乗せられてコンパクトなボディでもしっかりと現行同等の品質を持っている」と述べるとともに、「パッケージングについて、実際に全長を縮めながらも室内の有効室内長はほぼ同じだけをキープしていまして、非常にコンパクトながら広々とした室内空間を確保しています」とアピール。 走行面では「インテリジェントディスタンスコントロール」で運転をサポートしたり、パドルシフトとドライブモードで楽しく運転できたりといったことに加え、「クラス最高の空力性能および航続距離を実現しています。それに今回Googleを組み合わせ、インテリジェントルートプランナーでお客さまが実際に目的地をセットする。そうすると自動的にルートが引かれ、どこで充電すればいいのか、その充電先でいかにバッテリ温度がもっとも充電に適したものに自動的に調整されているか、そういった細かいところまで全てをソフトウェアでしっかりと管理して長い航続距離を実現させています。実際、航続距離(カタログ値)はアメリカで303マイル、欧州と日本においては600km以上を実現します。303マイル以上というのはお客さまからも望まれる数字でマジックナンバーとして使える、自信を持って届けることができると考えています」とも語った。 また、新型リーフでは「V2L(Vehicle-to-Load)」機能を備え、米国仕様では室内と荷室にそれぞれ120Vのコンセントを搭載しており、合計最大1500Wの電力を使うことができ、キャンプなどで電化製品が使える。さらに日本仕様では「V2H(Vehicle-to-Home)」機能も継続して採用し、V2H機器と接続することで車両のバッテリから家庭へ電力を供給したり、太陽光発電の電力を車両に蓄電したりといったことが行なえることが語られた。 ■ もっとも空力に力を入れて開発 一方、チーフ・ビークル・エンジニアの磯部氏は歴代リーフが持つDNAについて「多くのお客さまが違和感なくEVを受けて快適に扱えるクルマ、さらに地に足がついた技術で快適で楽しいドライビングをサポートするクルマ、そして2010年以降、グローバル向けとして世界初となる量産EVの発売以降、15年間トータルで70万台の販売台数、かつ総走行距離は280億km。非常に長い距離を世界中走りまわったリーフの、市場実績に裏打ちされた安全性、あるいはこの信頼性をわれわれが引き継いでいかなくてはいけないと考えて開発してまいりました」と語る。 その3代目リーフでは“効率至上主義”を掲げ、いたずらに大きいバッテリを積んで航続距離を伸ばすのではなく、必要最小限の容量でなるべく航続距離を伸ばしたり、クルマの中で発生した熱を無駄にしたりしない、そういったことを意識しながら開発を進めてきたという。 こうした3代目リーフのコンセプトを具現化する技術として、「効率至上主義で成し得た実用性能」「EVの高品質な走りの革新」「効率至上主義の合理的な車両パッケージ」の3点を挙げた。 1点目の「効率至上主義で成し得た実用性能」では、今回のリーフでもっとも空力に力を入れて開発してきたことを説明し、「EVは元々非常にエネルギー効率が良いので、一番EVの走行抵抗、負担になるのか空力と転がり抵抗です。この空気抵抗をいかに減らすかということで、今回ファストバックのシルエットを使い、いわゆる飛行機の翼断面のようなサイドビューを作ることによって空気抵抗を減らしてまいりました。(ルーフからテールゲートにかけて)17度のアングルをつけていますが、17度というのが空力をよくするマジックナンバーで、これ以上寝かしてもこれ以上立てても空力は悪化してしまう。この17度という線を厳格に守りながら、今回のこのスタイリングとパッケージングをまとめてまいりました」とアピール。 また、ホイールでは開口の大きさをブレーキの冷却性能とのバランスを見ながら極力小さくし、ボディサイドの流れをなるべく整流することで空気抵抗を落とすことまでこだわって作り上げたといい、「空力をよくするにはクルマの4隅の形、これが非常に重要になります。この四隅の形を決めるために風洞にこもり、クレイモデルを1mm単位で削って空力の改善をやってまいりました。さらにフードのセンターの位置について、この高さが10mm上がるだけでも非常に大きく空力に影響します。スタイリングと空力をうまく融合させるために何度も風洞の中でこの形を決めてまいりました」とも語っている。 さらにアンダーフロアの形状にもこだわったとし、「50mm以下のギャップを95%以上で覆いつくせるぐらい、とにかくフラット」と表現。その顕著な例がジャッキアップポイントであり、そこにもカバーを付けて空気の影響を排除するとともに、リアサスペンションのリンク部分にもカバーを付けているというこだわりを見せた。加えて側面の突起を抑えるポップアップドアハンドルを採用したことについても触れ、「中にはこのフラットドアハンドルは凍って開かなくなるんじゃないかと心配されるお客さまもいらっしゃいますが、そういった寒冷地の中でもきちんと出たり引っ込んだりができるというのを確認しております」とフォローした。 これに加え、今回統合熱マネジメントシステムにもこだわったといい、「現行リーフはHVAC(暖房・換気・空調)システムにヒートポンプを採用しました。これによって家庭のエアコンと同じように、初代のリーフがPTCヒーターだけ、いわゆる電気ストーブみたいな形で室内を暖めていたのですが、現行リーフからはヒートポンプを採用しています。さらにアリアではそのヒートポンプをバッテリにつなげてあげて、バッテリを冷却したり熱を回収したりするのにも使っています。3代目リーフではeパワートレーンともつなげることによって、例えばモーターで発生した熱を空調に使うとか、逆にラジエーターを使って効率的にバッテリを冷やしてあげたいと。アリアの場合、エアコンのコンプレッサーでバッテリを冷やしていましたが、今回はエアコンのコンプレッサーを使わずに、ラジエーターを使ってバッテリを冷やすということによってなるべく消費電力を減らす。とにかく効率をよくしようということに努めてまいりました」と説明する。 また、ナビゲーションと連動した「ナビリンクバッテリーコンディショニング」では走行ルートに応じてバッテリの温度を最適化することができるという。これはナビで目的地を設定すると、例えば市街地走行のように走行抵抗が低い場合、バッテリに負担がかからないようなところではあえてバッテリを冷やさないようにし、冷やすのにかかるエネルギーを少なくする。あるいはラジエーターを使ってコンプレッサーを回さずにバッテリを冷やすといったことで効率を高めた。さらに「ナビリンクバッテリーコンディショニング」では、急速充電したあとに高速道路を走る、あるいは市街地を走ることを先読みして、例えば市街地であればバッテリをあえて冷やしすぎないようにして、そこで消費電力を抑える。また、高速道路を走ることが予想される場合は急速充電器につながっている状態でバッテリを冷やす(充電器を外したあとにバッテリを冷やすとそれで電気を使ってしまう)といったことが可能になっているとのこと。 一方でプラットフォームは刷新され、新しいバッテリシステムと3-in-1電動パワートレーンを採用。今回、バッテリのビッグモジュールを使ったパッケージにより、パックレベルでのエネルギー密度が約17%改善するとともに、3-in-1電動パワートレーンでモーターとしてのトルクウェイトレシオは約29%改善したという。 充電の仕様については、日産では初めて北米においてNACSポート(いわゆるテスラのスーパーチャージャー)を採用。欧州ではCCS2(いわゆるコンボ)、日本ではチャデモを搭載。充電性能では、今回バッテリにヒーターをつけない状態でも、現行リーフに比べて約-10℃での充電精度が70%向上、さらにそこでヒーターをつけることによって125%向上と、低温での急速充電が大幅に改善。 3-in-1電動パワートレーンでは現行リーフのパワートレーンに対して10%の容量を削減した一方でモーター最大トルクは4%向上。また、磯部氏は「ローターの斜め構造配置の廃止によって、その配置と高剛性ハウジングと一体化することによってインバーターとモーターと減速機が1つのハウジングで構成され、非常にユニットの剛性が上がりました。それによって振動そのものを抑えることができていますので、今回乗りいただくとモーターの音がしないなというのを体感できると思います」と述べた。
ソース:日産、新型「リーフ」(第3世代)説明会 「常識を覆す、新時代のクロスオーバーEV」はどう進化した?(Car Watch) – Yahoo!ニュース