いよいよ電気自動車の時代、バッテリーのリサイクルが鍵に

2021.06.11

米国にも電気自動車(EV)の時代がやって来そうだ。

2021年5月、米フォードが電気自動車「F-150ライトニング」を発表した。米国の自動車で最も売れているピックアップトラック「F-150」の電気自動車版で、価格はおよそ4万ドル(約435万円)。フォードに入った予約は、わずか48時間で4万5000件近くに上った。これは昨年米国で登録された全EV台数の20%近くに相当する。(参考記事:「米国もついに電気自動車の時代へ? バイデン政権が改革」

電気自動車は、気候変動の問題に取り組むうえで不可欠な産業だが、その成長にともなって新たな課題も生じている。バッテリーに必要な金属をどうやって手に入れるかだ。

バッテリーに含まれるリチウム、ニッケル、コバルト、銅は、すべて地中から採掘される。現在、その採掘地はロシアやインドネシア、コンゴ民主共和国などに集中しているが、環境監視が行き届かない、労働基準が曖昧、地域社会との対立があるなど問題も多く抱えている。EVの数は2020年の1000万台から2030年には1億4500万台に増えると予想されていることから、バッテリー用の鉱物需要が急増するのは必至だ。クリーンな車への移行が、不正な採掘を増長させかねないと危惧する声も上がっている。(参考記事:「絶景ウユニ塩原に眠る「お宝」はボリビアを救うか」

新たな採掘を減らすうえで鍵となるのが、いかにバッテリーをリサイクルするかだ。今後数十年の間に廃棄されるバッテリーは数百万トンに上るとみられる。これらを単なるごみにしてしまわないためには、より良いリサイクル方法と、それを支援する政策が欠かせない。

「『気候変動の問題に取り組もう、新たな鉱床を開発しよう、できるだけ早く採取しよう』というやり方は、短期的には機能するかもしれません。しかし、長期的な問題にはより注意の行き届いた解決策を考える必要があります」と、非営利の環境団体アースワークスのパヤル・サンパット氏は言う。

バッテリーの分解

EV用バッテリーは複雑な技術の塊だが、原理は携帯電話で使われているリチウムイオン電池と同じ。個々の電池は、リチウムやコバルトなどでできた正極、黒鉛でできた負極、それらを分けるセパレーター、電解液で構成されており、負極に蓄えられていたリチウムイオンが正極に移動することで電流が発生する。

携帯電話ならこのような電池1つで十分だが、車を走らせるには数多くの電池をひとつに束ねる必要があり、総重量は数百キロに達する(F-150ライトニングのバッテリーは900キログラム近いと言われている)。

ソース:いよいよ電気自動車の時代、バッテリーのリサイクルが鍵に | ナショナルジオグラフィック日本版サイト (nikkeibp.co.jp)