テスラの大型蓄電システム『メガパック』 が日本に上陸〜再エネ電力活用の進展へ

メガパックの導入で建物の「ZEB」実現を目指す

テスラの大型蓄電システムである『Megapack(メガパック)』が導入されたのは、茨城県つくばみらい市の『高砂熱学イノベーションセンター』で、すでに2021年4月から稼働を開始しています。導入されたMegapackの総容量は2964kWh(約3MWh)、出力は429kWとなっています。

高砂熱学イノベーションセンターに導入されたMegapack。

高砂熱学工業株式会社(本社:東京都新宿区)は空調設備工事の国内トップカンパニー。同センターにはオフィス棟、ラボ棟、展示スペース、プレゼンルームなどがあります。施設内には超小型木質バイオマスガス化発電と太陽光発電など再生可能エネルギーによる約200kWの発電設備を備えており、Megapackが施設内の需要に合わせて適切に蓄電と放電を行うことで、施設全体のエネルギー(電力)自立化や、電力の安定供給に貢献します。

快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーが正味ゼロまたはマイナスの建築物を「ZEB(ゼブ=Net Zero Energy Building)」と呼び国が認証を行っています。同センターでは、Megapackの導入によって同センターのオフィス棟ではZEBを、また施設全体で「Nearly ZEB」(建物で消費する年間の一次エネルギーを75%以上削減する建築物)を目指すとしています。

Megapack=拡張性無限大の大型蓄電システム

テスラでは大型蓄電システムとして『Megapack』と『Powerpack』をラインアップして、商業・産業用、また系統電力用として世界各地での導入を進めています。

Powerpackは1システムあたりの容量が約200kWhで、バッテリーとインバーターは別筐体。2019年の記事『近鉄がテスラの蓄電池を導入』で近鉄が導入したのは、42基(総容量約7MWh)のPowerpackです。

Megapack

Megapackは1システムあたり約3MWh(約3000kWh)とより大容量で、ひとつの筐体には蓄電池、パワーコンディショナー、温度管理システム、インバーターなどがすべてオールインワンとなっており、現地での施工時間や短く、品質も安定しています。

導入に際しては、システム設計、試運転、カスタマーサービス、ソフトウェアまで全てをテスラがサポート。運転制御やウェブインターフェースによる遠隔監視などが可能なテスラ自社開発のソフトウェアも用意されているそうです。

また、Megapackはたとえば1MWhなど容量を下げて設置することも可能とのこと。ただし、容量を下げるとコストメリットも下がります。

おおまかな費用感や納期についてテスラジャパンに確認しましたが、価格などはプロジェクトごとにNDAを締結して提示する内容となり「非公開」ということでした。Megapack導入を検討したいという方は、テスラの公式サイトからお問い合わせください。

モビリティ電動化と再エネ電力活用は一緒に進めるべき

電気自動車情報メディアである『EVsmartブログ』で日本初のMegapack導入を取り上げるのは、「テスラだから」ではありません。モビリティの電動化は脱炭素、そして脱化石燃料の社会を進めるための重要な手段ですが、エンジン車を電気自動車に置き換えるだけでは不十分。発電時の温室効果ガス排出削減、つまり再生可能エネルギーの活用普及を同時に進めていくことが大切です。

再エネ発電で広く普及している太陽光発電や風力発電は、気候や時刻によって発電量に大きなばらつきが生じます。再エネで得られた電力を有効に活用するためにも、Megapackのような大容量蓄電池が重要な役割を果たすのです。

日本では世界に先駆けて電気自動車のバッテリーを系統電力と連携するV2Hが進められてきました。今後も、電気自動車とともにV2Hの普及を進め、社会全体で再エネを有効に利用する仕組みが広がっていくことに期待するのとともに、コストパフォーマンスに優れた大規模蓄電システムはサステナブルな社会実現のために不可欠なツールでもあるのです。

Megapackの拡張性は「無限大」。つまり、システムを繋げることで途方もない容量の「蓄電所」を構築できます。テスラジャパンのリリースでは、アメリカで建設中の容量730MWhのアメリカの事例や、オーストラリアに建設中の450MWhの事例などが紹介されています。

アメリカ カリフォルニア州 モスランディングに建設中の世界最大級の182MW/730MWhのMegapackシステム。ピーク用天然ガス発電所の代替として設置され、容量市場への参加も予定。
(2021年第二四半期 稼働予定)
オーストラリア ビクトリア州 ジーロング(Geelong)に建設中の300MW / 450MWhのMegapackシステム。太陽光エネルギーや風力エネルギーの蓄電・放電による再生可能エネルギーの活用に加え、系統電力の安定に貢献。また、ビクトリア州政府の「2030年までに再エネ率 50%」という目標の達成をサポート。
(2021年11月 稼働予定)

カーボンニュートラルを目標としたモビリティの多様化に異論はありません。でも、国が悪い、電力がダメと文句を言いつつ立ち止まっていたのでは、サステナブルな社会なんて実現できません。現在の技術や製品で「すぐにできること」はあるはずです。日本でも、賢明な再エネ活用が進んでいくことを願っています。

ソース:テスラの大型蓄電システム『メガパック』 が日本に上陸〜再エネ電力活用の進展へ | EVsmartブログ