リチウムイオンバッテリー、全固体電池、急速充電 etc……2021年現在の電池事情を探る:MFi178特集「よくわかるバッテリー」

「バッテリーを制するものは電動車を制す」

いま注目の電気自動車(BEV)普及の加速は、リチウムイオンバッテリーの技術により飛躍的にエネルギー密度が向上したことが影響しています。現在では、内燃エンジン車と同等の航続距離を確保するまでに至っていますが、それにはフロア下を覆い尽くすほどの、大量の電力を蓄えるバッテリーユニットが必要不可欠となっているのもまた現実です。車両価格の大部分を占めると言われている製造コスト、生モノであるがゆえに使わずとも進んでしまう劣化との戦い、その先にある充電の問題、そして一番重要な安全性の確保。車載用としてはまだ未成熟な領域であり、乗り越えなければいけない課題は数多くあります。

今回の特集では、現在のバッテリー技術を正しく理解するための基礎から、車載用としてのパッケージング技術、そして今後、本格的かつ健全で持続的に普及させるために期待されるブレークスルーする技術を探っています。

本当に“電気自動車こそエコ”なのか

欧州勢や中国が喧伝する、電気自動車=エコは、走行段階でのCO2(二酸化炭素)排出規制に添えば、大幅に削減できるから正しいと言えます。しかし、そのいっぽうで、日本を中心に、燃料の採掘、精製から給油所までの輸送といった段階まで含める、Well to Wheel(ウェル・トゥ・ホイール)で考えるべく論調も広まっており、その点では必ずしも電気自動車=エコではありません。また、エコという代名詞を掲げるEVにおいて、走行エネルギーの多くが巨大なバッテリーの運搬に費やしている事実は違和感を抱きます。カーボンニュートラルへの道筋は、EVの促進だけではないと言われるのはその理由からです。バッテリーの詳細技術に入る前に、Well to Battery(ウェル・トゥ・バッテリー)について考察してみました。

バッテリーを正しく理解するための基礎講座

バッテリーは、電気自動車をはじめとした電動車の出力特性や航続距離といった性能向上に大きな影響を及ぼすキーデバイスです。ただ、化学変化によって電流の出し入れを行なう際に目視できないがゆえ、理解の難しさがハードルとして立ちはだかります。バッテリーユニットの役割と機能とはなにか、充電や劣化など電動車への車載で発生するであろう事例とそれにともなう素朴な疑問への理解を求め、東海大学木村教授率いる電気のエキスパート3名に話を伺いました。

駆動用2次電池の現在

自動車に搭載されるバッテリーユニットは、基本的には電池の集合体ですが、大量の電力を安全に車載するにあたり、安全性を確保するべくさまざまな技術が盛り込まれています。クルマを駆動させるだけのエネルギーを持った2次電池=バッテリーはまだ進化途上にはありますが、そのいちばん新しい性能と仕立て方を、東芝SCiB、日産ノートe-POWER、ホンダHonda e、マツダMX-30 EV MODEL、三菱エクリプスクロスPHEVを例に解説しています。

世界が変わるバッテリーの将来技術

バッテリーの性能に大きく左右される現代の電動車は、仮に電池の性能が飛躍的にジャンプするとどうなるのでしょうか。次世代車載電池の最有力候補と言われている「全固体電池」、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が進める「革新的2次電池」、適材適所の充電インフラ整備を目指す急速充電器の「CHAdeMO」、そして、バッテリーの資源リサイクルまで次世代のバッテリー技術の展望を考察しています。