宇宙に打ち上げられたイーロン・マスクのテスラが地球に衝突する可能性は11% しかし…

<2月6日にイーロン・マスクのスペースXが宇宙に打ち上げた「テスラ・ロードスター」のこの先300万年の動きをカナダのトロント大学のプロジェクトがシミュレーションした>

米電気自動車(EV)メーカーのテスラの創業者でもあるイーロン・マスクによって2002年に設立された民間宇宙企業のスペースXは、2018年2月6日(アメリカ東部標準時)、アメリカ航空宇宙局(NASA)のケネディ宇宙センターから、マスクが所有するテスラの2008年製EVスポーツカー「テスラ・ロードスター」を搭載した宇宙飛行用大型ロケット「ファルコンヘビー」を打ち上げることに成功した。

“スターマン”と呼ばれるマネキンを運転席に座らせた深紅の「テスラ・ロードスター」は、現在、火星と地球を横断する軌道に乗っており、火星を超えて太陽から地球の軌道距離に戻ることを繰り返す楕円軌道を走行中だ。

 

 

この先300万年の動きをシミュレーション

カナダのトロント大学スカボロ校(UTSC)の研究プロジェクトは、2018年2月、数理とコンピューターサイエンスを組み合わせて惑星の動きを高速で計算する精巧なソフトウェアを使い、この先300万年の「テスラ・ロードスター」の動きをシミュレーションした。

この研究プロジェクトは、カナダの自然科学局(NSERC)の助成のもとで実施され、その結果をまとめた論文は、英国王立天文学会の月間報告「マンスリー・ノーティス・オブ・ロイヤル・アストロノミカル・ソサエティ」に投稿されている。

それでは、宇宙を半永久的に走行する「テスラ・ロードスター」が私たちの地球と衝突する可能性はどのくらいあるのだろうか。

シミュレーションの結果によると、「テスラ・ロードスター」が地球に初めて接近し、20万キロメートルから30万キロメートルの地点を通過するのは2091年とみられ、この先100万年以内に地球と衝突する確率は6%、金星と衝突する確率は2.5%と予測されている。そして、300万年先まででは、11%に確率が上がるという。

地球と接近するたびに重力の影響を受けるため、「テスラ・ロードスター」の周回軌道が長い年月のうちにどのように変化するかは、地球とどれくらい接近するかによって決まり、軌道のわずかな変化が周回軌道に大きな影響をもたらしうる。それゆえ、数百万年にわたって地球との近接遭遇を繰り返すことによって、「テスラ・ロードスター」の周回軌道を正しく予測することは不可能となる。

今回の研究プロジェクトでは、2018年から300万年分のシミュレーションのみ実施したが、筆頭著者のハンノ・レイン教授は、この先1000万年以内に「テスラ・ロードスター」が地球もしくは金星と衝突する可能性が高いとみている。

ただし、「テスラ・ロードスター」が地球と衝突したとしても、そのほとんどは大気中で燃え尽きるため、人々の健康や安全を害する可能性は極めて低いとのことで、その点については、「テスラ・ロードスター」の行く末を安心して見守ることができそうだ。

ソース:宇宙に打ち上げられたイーロン・マスクのテスラが地球に衝突する可能性は11% しかし…|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)