欧州の洋上風力がグリーン水素で加速 洋上で製造、海底で貯蔵も

2022.01.17

オーストラリアと南米に次ぐ、グリーン水素大国の有力候補が中国だ。ただし、中国はグリーン水素の覇権争いのレースからはやや出遅れた格好である(表1)。

表1 中国での主なグリーン水素生産計画。1GW以上を取り上げた。
(出所:公開情報から日経クロステックが作成)
表1 中国での主なグリーン水素生産計画。1GW以上を取り上げた。
[画像のクリックで拡大表示]

中国は現在、風力発電が約300GW、太陽光発電も約290GWの計590GWと、再生可能エネルギーの導入量では他国を圧倒して世界一である。水素についても、2021年前半の時点で年間2500万トンを生産とやはり世界一。だたし、これまではその大半が“グレー水素”、つまり化石燃料を水蒸気改質して得る水素だった。

考えられる理由は大きく2つ。1つは、中国では電力の需要増に供給が追い付かず、再生可能エネルギーの電力を水素生産に回す余裕がなかった点だ。

もう1つは、水素生産の担い手が石油産業自身だったからだ。同国で水素の生産量トップは、中国Sinopec(中国石油化工集団)。中国全体の約14%に相当する年間350万トンのグレー水素を生産して、それを燃料電池バスなどに向けた水素ステーションに供給していた。2021年4月、Sinopecは中国全土に計1000カ所の水素ステーションを建設する計画を発表している。

もっとも、中国でもちょうどこの頃から本格的にグリーン水素推進の歯車が回り始めた。2021年3月、中国の全国人民代表大会で脱炭素戦略を進める「第14次五カ年計画」(2021-2025年)が承認されたのが大きなきっかけだ注1)

注1)中国は2020年に「2030年に二酸化炭素の排出量をピークに、つまり減少に転じさせ、2060年にカーボンニュートラルを達成する」といういわゆる「デュアルカーボン(双炭素)」方針を発表。これを正式に政策化したのがこの第14次五カ年計画である。

実際、これを機にそれまでグレー水素事業を進めていたSinopec自身が、グリーン水素を積極的に手掛け始めた。

具体的には、2021年4月に同社は「中国一の水素エネルギー企業」になることを宣言。それとほぼ同時に、太陽光パネルメーカー大手の中国LONGi Green Energy Technology(隆基緑能科技)と提携した。LONGiはアルカリ水電解装置も手掛けている。次いでSinopecは同年半ばに、中国で水素関連事業を推進する企業などで構成する「China Hydrogen Alliance(中国水素能連盟、CHA)」に加盟した。

そのCHAは2021年9月に「可再生水素100(再生可能水素100)」戦略を打ち出し、政府に採用するように提言した。これは2030年までに水電解装置を100GW導入し、年間3500万トンのグリーン水素を生産する計画である(表1)。計画名最後の「100」は、100GWまたは100%、あるいはその両方を掛けているかもしれない。

可再生水素100は形式的には、CHAが中国政府に政策提言したという格好だが、「既に発表前に政府に根回し済みなのは明らかで事実上の政府発表だ」(多くの欧米系メディアの報道)というのが冷静な見方だろう。

この時点での100GWはまさに世界最大級だった。ただし、その後オーストラリアのフォーテスキュー・メタルズ・グループ(FMG)とその子会社の同フォーテスキュー・フューチャー・インダストリー(FFI)が2030年までに150GW、将来的には南米で1000GWという常識外れの規模のグリーン水素生産計画を発表したことで、現時点ではややかすんでしまった印象だ。

ソース:欧州の洋上風力がグリーン水素で加速 洋上で製造、海底で貯蔵も | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)