米国のEV優遇制度、バイデン政権の無理難題に頭を抱える自動車メーカー

2022/09/07

中国企業抜きでバッテリーはまかなえるのか

一方、米国が締結しているFTAの相手国はUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の枠でカナダとメキシコ、中南米地域ではチリ、コロンビア、中米諸国、ドミニカ共和国など、アジア・大洋州地域では日本(部分的な自由化)、韓国、シンガポール、オーストラリアなどである。こうした国で採掘した資源を使うよう誘導することは簡単な話ではない。

さらに言えば、FTA相手国で生産されていたとしても、「懸念のある外国事業体」による「抽出、加工、もしくはリサイクル」は認められない。懸念のある事業体には中国やロシア資本の企業が含まれる。

ところが、世界のリチウムなどの加工工程のほとんどは中国事業体が牛耳っている。米国国内の製造に重点を置くテスラでさえ、中国で加工された原料をバッテリーに使用していると言われている。つまり、EV税額控除制度の鉱物資源採掘・加工条件はまったく現実に合っていない。

EVの米国市場での普及のカギを握る税額控除制度は企業にサプライチェーンの大幅な変更を迫ることを意味する。

冒頭のトヨタやホンダ、フォルクスワーゲンなどの動きは、米政府が求めるサプライチェーンの変更も大きく影響したものだと考えられるが、メーカーにとってサプライチェーンの変更は、高コストかつ時間がかかるために難題である。

GMやマツダなど各メーカーや業界団体は相次いで米国政府の目標達成は極めて難しい点を指摘しており、新興メーカーのリヴィアンは「結局は消費者の足をすくうことになる」と強く批判している。

思い切った判断で新法に対応し、米国市場で有利な立場に立つのか、それとも税額控除制度をあきらめるのか。メーカーの今後の動きが注目される。

ソース:米国のEV優遇制度、バイデン政権の無理難題に頭を抱える自動車メーカー(JBpress) – goo ニュース